遺跡馬鹿−遺跡レポート・トルコ



日本人にはよく知られているトルコですが、今回は有名なのに行く人が意外に少ない遺跡を紹介します。

◆ ワラム・カヤ・メザルラルの磨崖墓(アマスヤ)

    ▼アマスヤは黒海沿岸のサムスンから南へ100qほど行ったところにある、ヒッタイト時代からの歴史を持つ古い町です。
    この町を見下ろす山の北岸に数基の墓が彫り込まれています。
    これは紀元前3世紀ごろ、この地を統治していたポントス王族たちが残したものです。
    墓のつくりは、岩壁からカマクラを掘り出したところを想像して下さい。
    切り出した石に棺が置けるほどの室内をつくり、さらに岩壁と岩墓の間に人が一人通れるように隙間を作ってあります。
    磨崖墓の正面にはローマ風の柱もあり、当時はさぞ優雅だったと思われます。
    夜はライトアップされて更に幻想的です。
    ここは遺跡は好きだが、狭くて暗くてジメジメした雰囲気はもっと好きな人には一見の価値があります。
    市内にはモスクの地下で発見されたミイラを展示した博物館もあります。

    フェティエという地中海沿岸の街にも似たような(こちらはイオニア様式の家屋式墓)形の墓がガイドブックに載っていたので、行ってみましたが、規模は小さかったです。
    でもトルコにはこのような岩窟墓がかなりあるので、時間があれば丹念に調べてみたいですね。



◆ハットゥシャシュのヒッタイト遺跡(ボアズカレ)

    ▼スングルルからのミニバスでトルコの平原を30分ほど揺られてゆくと、オレンジ色の瓦が目にも楽しい、こじんまりしたボアズカレ村に着きます。
    ここは古ヒッタイトの首都が置かれていた所で、遺跡は岩だらけの山の上にあります。
    なぜそんな所を首都に選んだかというと、戦略上、有利な場所であったことと、一年中豊富な水が得られる場所であったためと言われています。
    全体図を写真などで見てみると、整然と区画されたこの遺跡が今から四千年前に築かれたとはとても思えないほどです。
    しかし今は石の基壇を残すのみで広々とした印象を受けます。
    ドンドンと石が積まれたあたりに有名なライオン門があります。
    風に削られ、すこし丸みを帯びていますが、魔除けの意味を込めて建てられたそうでなかなか勇ましい表情をしています。
    このハットゥシャシュ遺跡は大きな割には建物などは復元されていないし、レリーフなども博物館に運ばれているか、たとえあったとしても複製だったりするので全体的に見どころ少なく、ちょっとがっかりです。
    しかし復元図で当時の様子を調べてみるとそれはそれは壮大な城が建っていて、その規模は高さ1mから6m、厚さ8mにおよぶ壁で市街地を囲い、さらにその土台の上に粘土壁を建て増ししていたそうです。
     村には博物館もありますが、めぼしいものは皆アンカラに運んでしまい、発掘当時の写真などが遺跡ファンには興味深いかもしれません。
     ポアズカレ近くにはスフィンクス門で知られるアラジュホュック遺跡もありますが、私が訪れた時は公共の足がなかったので行きませんでした。
    今思えば無理してでも行けばよかったかなと思っています。



◆ ヤズルカヤのヒッタイト遺跡(ボアズカレ)

    ハットゥシャシュ遺跡から北東に2q、私の足で1時間近く歩いたところにヤズルカヤの屋外神殿跡があります。
    夕方に歩いていったので着いたときには辺りはすでに薄暗くなってきて、とても不気味な雰囲気でした。
    ここはヒッタイト人にとって聖地だったところで、ヤズルカヤは「文字のある岩」という意味です。
    その名前のとおり多くのレリーフがこの岩壁に彫られています。 大ギャラリーと呼ばれている灰色の岩壁には嵐の神や太陽神など神々の姿が浮き彫りされています。
    やがてトンネルがあらわれ、そこをくぐり抜けるとまた神域と呼ぶにふさわしい神聖な空間が現れます。
    そこには12神の行進やここを作らせたトゥダリヤW世のレリーフもあります。
    ヤズルカヤに浮き彫りされている神々は西洋に出てくるトンガリ帽をかぶり、可愛い印象を受けました。


◆ アンカラの「アナトリア文明博物館」

    ここはヒッタイト時代のコレクションが豊富なことでは世界一。
    「こんなものまで持ってきたのか!」と驚愕するほど大きなレリーフがあります。
    アラジュホユック遺跡の初期青銅時代(紀元前三千年前)の墓から出土した、
    太陽と鹿などをかたどったスタンダードと呼ばれるが儀式用の飾りものが必見です。
    ここでは日本語で書かれた解説書が買えます。
    写真も豊富で訪れた際には是非購入することをお薦めします。



◆ 木馬で有名なトロイの遺跡(トロイ)

    木馬で有名なトロイの遺跡。
    それを意識してか大きな木馬がお出迎えしてくれます。
    しかしあなどってはいけません。この木馬は大きさも木材も当時の資料を忠実に再現したものだそうです。
    私が行ったときはシーズン・オフのせいか、見学者が一人も居なかったので心ゆくまで静かな遺跡を回ることが出来ました。
    入り口に売店があり、そこではなんと日本語で書かれた遺跡のガイドブックが売っていました。
    「トロイア」というタイトルです。(私が買った時でUS$8)
    日本のガイドブックはトロイに関しては大ざっぱなのでこのガイドブックはお薦めです。
    なにしろトロイの遺跡は前三千年から後五百年まで、9つの都市が重なる複雑怪奇な構造になっているので、
    詳しい解説書がないと自分が今、何を目の前にしているのか分からなくなるからです。
    せっかく訪れたのにただ「すごい」という感想だけではもったいないですからね。
    「トロイア」の本は見学コースにそって解説してあるし、写真も多いので、
    「シュリーマンがプリアモスの財宝を掘り当てたところ」とか「トロイの木馬を運び込んだ城壁」などなどしっかりチェック出来ます。
    でも随分前の話なので、もう売ってないかもしれませんが…。
    トロイの遺跡は当時16mの高さを持った丘の上に築かれ、今、この丘は32mの高さになっています。
    つまり5000年の間に16mも地面が高くなったわけです。
    興味のある方は実際に訪れて確かめてみて下さい。




参考文献

「ヒッタイト帝国」 ヨハネス・レーマン 佑学社
「アナトリア文明博物館」同博物館出版
「トロイア」チャナッカレ博物館出版
「ひとりで行ける世界の本 トルコ・イスタンブール」日地出版
「トルコ」 ブルーガイド・ワールド
「地球の歩き方・イスタンブールとトルコの 大地」ダイヤモンド社 
「王家の紋章」細川智恵子  実はイズミル王子ファン。




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