遺跡馬鹿−シチリア島は遺跡だらけ


シチリア島遺跡めぐり


巨大な神殿群が残るシチリア島の遺跡をこってり紹介します。




パレルモ



州立考古学博物館
    シチリアの各地から出土した遺物を展示してあります。
    この羊は紀元前3世紀に造られたものです。本当に立派なブロンズ像です。
    修道院を改造した建物なので、中庭に噴水などがあります。
    さて、私がお勧めする目玉は2つあります。まずはトフェの墓。
    荒く削られた石棺に人がどのように埋葬されていたかを理解するのに役立ちます。
    博物館の中庭にもたくさん石棺が放置されています。
    石棺マニアにはたまらないところです。

    そしてここの最大の目玉は
    「トラパニ」で発見された、古代人の線刻画です。
    探し求めていた「穴ぼこ」がこの遺跡にはあるそうです。写真が展示してありました。
    それと動物の線画の上を、刃物で切られたような線で傷をつけているものなどあり、
    とっても興味深かったです。
    この写真は3階にあります。石オノやヤジリなどと一緒の階なので、是非行ってください。

アグリジェント



ジュノーネ・ラチニア(ヘラ)神殿
    アグリジェント遺跡の中でも一番遠いところに建っている神殿です。
    ここの見所は、紀元前406年にカルタゴ侵攻によって焼かれた神殿の、赤く変色した壁石でしょうか。
    また神殿の脇に残る石組みは写真でも分かるとおり、「キッチリ・ピッチリ」積んであり、これこそ当時の技術水準がいかに高かったかを雄弁に語っていると思います。
    その後の地震で神殿は大きく崩れ、当時を忍ばせるものは25本のドーリア式柱とそれをささえる土台だけとなってしまいました。
コンコルディア神殿
    アグリジェントを代表する大神殿です。
    建造されたのは紀元前460〜440年頃と推測されています。
    はり(柱をつなぐ横木)をよく観察すると「Uの字型」の出っ張りが今でも残っているのが確認できますが、これは石を運ぶ綱をかけるためにこの形に削ったそうです。
ヘラクレス神殿
    アグリジェントの象徴ともいえる神殿跡です。
    現在は8本しか立っていませんが、当時は正面に6本、側面に15本もの柱が立っていたそうです。
    円柱の周りには巨石がゴロゴロしていて、ちょっと迷路のようになっているのが楽しいです。
わだち跡(入り口近く、道路沿い)
    注意しないと見過ごしてしまいそうな、小規模遺跡。
    これは「馬車などが通った跡」という意味で「わだち」と紹介していますが、これとよく似たものがマルタ島にもあり、こちらも同じような意味で「カートラッツ(Cart ruts)と紹介されています。
    学者の説では紀元前3600年ほど前に、神殿建設の折り、巨石を引くためのソリが残した跡ではないかということです。
    私の考えですが、ギリシャ人がこの地を聖なる場所と決める前に、すでにここは聖地だったのではないかと思います。この場所に立てば誰でも納得していただけると思いますが、ここからはとても素晴らしい海が望めます。今から6000年前ならもう少し海も近くにあり、多くの参拝客が丸木船でやってきたのではないかとおもいます。
    まあ、私の勝手な想像ですが…。
ジュピター神殿
    チケット小屋を通り、テケテケ歩いていくと、突然ふて寝した巨人が現れます。「テラモーネ」という呼び名です。もとは神殿を支える柱に取り付けてあったそうです。オリジナルは博物館にありますが、ニセモノもよくできています。
    これは紀元前480〜470年以降に建造が始まりましたが、出来上がる前にカルタゴによって破壊されました。
ディオースクリ神殿
    アグリジェント遺跡のはずれにある、ちょっと孤独な神殿跡です。
    もとは壮大な神殿だったそうですが、今は柱が4本残るのみです。
    しかし形の美しさから、アグリジェントのシンボル的な存在になっています。
    この遺跡の付近には円形や方形の祭壇跡が残っていますが、これは生け贄を捧げるための祭壇だったそうです。時代はヘレニズム・ローマ期です。


考古学博物館
    遺跡から少し離れているので、町からバスで来る人は、最初、ここで降りて、見学後歩いて遺跡へ向かった方が効率的です。
    カメラOKです。
    ここの目玉はジュピター神殿から運んできた「テラモーネ」の実物と、頭部のみのテラモーネ2個です。解説ではそれぞれがアジア顔とアフリカ顔の特徴を持っているとなっています。確かにそうかな?。
    その他、大量生産されたアルテミス像やら動物の角をモチーフにしたお玉?など、珍しいものもありました。


マルサラ
考古学博物館
    なんといってもここの目玉は「海中から引き上げた本物のフェニキア船」です。
    本当は写真を撮ってはいけないのですが、こっそり撮ってしまいました(ごめんなさい)

    この船は紀元前3世紀、ポエニ戦争の頃に沈没したものだそうです。
    写真ではよくわからないと思いますが、板の張り合わせ方などもとても上手に出来ていて、
    当時の造船技術の高さがよくわかります。
    また、運んでいたアンフォラ壺なども大量に展示されていて、当時、ここが港として繁栄していたことを偲ばせます。
    この博物館の裏手はすべて遺跡ですが、現在は埋めもどしてあるので、ただの荒れ地にしか見えません。
    しかし、地面をよく見ると土器のかけらがたくさん落ちているので、時間つぶしにきれいな土器片を探すのもおもしろいです。


モツィア

モツィア島
    「島ごとカルタゴの遺跡」
    こんなにグサッとマニア心を串刺しにする宣伝文句は見たことありません。
    訪れてみると、確かに小さな島なのに盛りだくさんで1時間ではとても足りませんでした。
    現在は小舟に乗って優雅に上陸しますが、いずれは道を通すようです。


「1.船着き場」
「2.ホイタッカー博物館」
    島内からの出土品を展示してあります。とても小さな博物館です。
    ここの目玉はなんといっても、妖しい魅力の「モツィアの青年像」です。
    「フェニキア時代の傑作!」とも言われるこの像、男性像なのに体にまとうプリーツの艶めかしいこと。
    係りのお兄さんが「後ろにも回って見ろ」というのでどれどれと回り込んでみると、確かに「プリッ」っとしたお尻が…。
    当時の貴族の屋敷って…、ね…。
「3.ZONE E」
    建物の中に発掘したまま残る、先史時代の遺構と紀元前7世紀から3、4世紀ころに移民した人々の遺構。

「4.モザイクの館」「5.CASAR METTA」

    白と黒を基調とした、モダンな配色。馬と牛が床に描かれています。部屋自体はこじんまりとしていて、当時の貴族は優雅に暮らしていたことが分かります。

    5番の「メタ家」には立派な門が残っていました。


「6.南門(PORTA SUD)と船の修理場(COTHON)」

    船の修理場は保存状態もよく、広々とした空間が気持ちいいです。

    左側は海から修理場を覗いたところ。
    右は修理場から海を見たところ。

「7.ABITATO ZONE B」

「8.ABITATO ZONE A(アンフォラの家)」

「9.中央エリア」 (現在見学出来ません)

「10.トフェ」と「11.ネクロポリス」

(左)フェニキア人たちが幼児を生け贄として捧げ、埋葬した場所。

(右)一般人の墓跡

両者を比べると、墓の作りが全く違うのがよく分かります。
トフェのほうはドルメンに良く似ていますよね。


「12.工房跡」

「13.寺院跡」

「14.北門」
    南門に比べて、小さな門構えで、いかにも「裏口」といった感じです。

「15.西階段と砦跡」
    比較的保存状態が良く、実際に階段を上り下り出来ます。


セジェスタ

劇場
    バルバロ山の斜面に、紀元前3世紀ギリシャ人の手によって劇場が建設されました。
    直径63mもの劇場の背面はシチリアの風景を生かした大パノラマとなっていて、とても気持ちのよい劇場です。


神殿
    どんな神を祭っていたか分からないため、ただ「神殿」と呼ばれています。
    ドーリア式の柱を持つこの神殿は他の神殿のような神室を持たないため、昔から謎の神殿と言われています。
    また柱にも溝が彫り込まれていないので、粗い印象を受けますが、それがかえってこの神殿の孤高性を高めてくれているようです。

    夜はライトアップされるので、もし見るチャンスがある人は見て欲しいですね。

    ここはものすごく交通の便が悪いです。


セリヌンテ



E神殿
    セジェスタなどと比べると小さい感じがしますが、複雑な神室が残っているので、見応えがあります。
    特に注目して欲しいのは、精巧な石積みの技術です。写真でも分かるとおもいますが、「ピッチリ」積んであります。これが紀元前480年頃の技術とは驚きです。
    女神ヘラに捧げられた神殿と考えられていますが、根拠がないため、アルファベットで呼ばれています。
F神殿
    紀元前560〜540年にアルカイック様式で建造されましたが、今は見る影もないほど崩壊しています。女神アテナに捧げられたという説があります。
G神殿
    紀元前550年頃に建設が始まったこの神殿は、幅54m、長さ113mというとてつもなく大きな神殿でした。しかしカルタゴの来襲に遭い、今は廃墟と化しています。
    ゼウス神に捧げられた神殿という説があります。

    個人的には非常に気に入りました。
    今までいろんな遺跡を見てきましたが、ここほどワクワクさせてくれる遺跡は、
    シリアのボスラー以来ではないでしょうか。
    (あくまでも個人的趣味)
    とにかく転がっているパーツがでかい。ものすごくでかい。それが完全に崩れている。見る影もないほど破壊されている。これこそベストオブ廃墟!
    あたりの雰囲気もいいし、おすすめの遺跡です。
C神殿
    西のアクロポリスに唯一残る神殿跡がこのC神殿です。しかし現在修復中のため、無粋な足場がかかっています。
カルタゴ時代の住居跡
    西のアクロポリスの北部にはカルタゴ時代の住居跡が砂に埋もれて残っています。
    未発掘というわけではないのですが、海からの風が砂を運んできてしまい、埋もれてしまったようです。
    でもそれはそれでまた趣があり、楽しい見学をすることができます。
    要塞跡も残っているので、見応えもあります。


シラクーサ

アルキメデスの墓
    町中に突然現れる、古代人の墓。
    なぜか地元ではアルキメデスの墓と呼んでいます。このあたりは巨大な採石場だったらしく、大きな穴がポコポコ空いています。
ヒエロン2世の祭壇(Ara di IeroneU)
    とてつもなくでかい基壇が残っています。紀元300年ころのものだそうです。
ディオニソスの耳
    シラクーサの観光といえば、この巨大な岩のわれめでしょう。
    このあたりは「天国の石切場」と呼ばれています。
    高さは36m、天井にはこうもりが飛び交ってました。
    昔は牢獄として使用されていたそうです。ものすごく反響するので、手をたたいたり、声をだしたりするとおもしろいです。


ギリシャ劇場
    シチリアで一番大きなギリシャ劇場です。
    紀元前3世紀に建設されたもので、1万5千人もの観客を収容できるそうです。
    そして不思議なのは、劇場の上部に岩窟墓がいくつも作られていることです。
    なかにはわざわざ水を引いて滝のように細工してある洞窟もあります。

    写真は洞窟内部です。


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